【コラム】司法書士物語 第二話 「踏み倒されたお金を取り戻す」堀内信大

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司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマは、債権回収について。

債権者の深いため息

重たいビールケースを軽トラックで運びながら深い溜息をついた。
大塚真司 ―「でも、どうにもなんないだろなぁ…」

なかば諦めながら、遺産相続や商店引継ぎの法律相談をしてくれた佐賀司法書士事務所に向かった。話に聞く弁護士事務所と違って、そこは気さくで話易い雰囲気だったのだ。

大塚真司 ―「最初から調子いい人だなぁとは思ったんですが、100万円の手形を出され何となく信用してしまったんです。先生、回収は無理ですよね?」

佐賀司法書士 ―「不渡手形ですか。難しいん場合が多いんですけど、せっかくウチを頼られて来られたんだから、何とかしたいですねぇ…。相手は、行方不明?」

大塚真司 ―「それが、図々しいというかふてぶてしいというか、今度、別会社を設立するようです。」

佐賀司法書士 ―「ん?別会社ですか?」

債務逃れの常套手段-別会社設立-

大塚真司 ―「どうせ第2会社ですから別法人ということでダメなんでしょ?」

佐賀司法書士 ―「それはそうとも言えませんよ。これは、回収出来るかもしれません。」

大塚真司 ―「ほ、ホントですか!!」

約束手形の振出人に対する請求権の時効は、満期から3年である。所持人ら裏書人への請求は1年。裏書人からほかの裏書人への再遡及は6ヶ月。小切手も6ヶ月だ。手形や小切手でない普通の商品の売掛金は2年である。

一般の貸金・債権などの時効は10年、商事の場合でも5年であるの比べてぐっと短いのは確かだ。しかし、このように短期時効が定められている債権でも、裁判や和解、調停の手続きで確定すると、一律に10年に伸長される。

だから、時効になる直前にこれらの手続きを取るべきなのだが、相手が倒産したようなときはスピードが第一だ。まだ倒産の余繍が冷めやらぬうちに判決をとっておくのが一番賢明な債権保全策なのだ。

佐賀司法書士は、直ぐ様手形訴訟を起した。

第1回の裁判の日。倒産した相手は当然不出頭、つまり、出て来ない。そして、債権者の言い分はすべて認められものの数分で結審となりそれで判決がでる。

むろん、債権者・大塚真司の勝訴である。

その後、相手は不服の申立てもせず放ったらかしにして2週間で判決は確定した。こうなったら、もはやこの判決は確固不動のものである。

さて、ここまでくると、あとはただ敵が岩陰から頭を出すのをじっと待っていたらいい。相手が頭を出したところをズドーンと一発。それで全てが解決するのである。

そして、1年後。

法律は正直者がバカを見ないようになっている

倒産し不渡手形を大塚真司に掴ませた取引先は、ホトボリがさめたと安心したのか、新会社を設立した。

倒産したときは個人商店で3名の身内で固めていた。新会社はその内の2名が発起人で、さらに同じ3名が取締役である。営業内容も得意先も全く同一である。酒類・食料品卸商なのだ。

こういう状況では、倒産した個人商店が新会社へ営業権を譲渡したとみなされることが多い。

裁判例によると、個人経営「河野工務店」を「河野工業㈱」として再出発した場合、両者の間には、商号の続用があるとされ、新会社は旧債務について、弁済の責任を免れないのである。

大塚真司は、こうして100万円の手形を全額回収できたのである。

大塚真司 ―「信じられない!有難う御座いました!!」

佐賀司法書士はニッコリと微笑んで言った。

佐賀司法書士 ―「法律は正直者がバカを見ないようになっているのですよ。」

ワンポイントアドバイス

堀内信大先生
※商号の続用がない場合には、この手は使えませんが、法は正義の実現を目的とするものだから、抜け穴を悪用する手合いをこらしめる法律的なテクニックは、他にも色々あるのです。だから、困ったときは、司法書士に知恵を借りに来てください。新しい法人格の衣をかぶって、旧債務を踏み倒そうとしても、「法人格否認の理論」というのがあるのです。会社で抱えた多額の債務を免れるために、いったん倒産して全てを有耶無耶にし新たに第2会社を設立して心機一転まきなおしを図っても、法律はその会社を新しく独立した会社とは認めないのです。つまり、前の会社と新会社との間には、親子以上に濃い血のつながりがあるとみなし、前の会社の債務を強制的に引き継がせるのです。

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