【コラム】司法書士物語 第三話 「ご近所トラブル」堀内信大

The following two tabs change content below.
司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマは、ご近所トラブルについて。
大坪健作氏は、神奈川県Y市で資本金450万円の㈲大坪家具店を経営している。同社は、大坪氏の父親が創業したもので、彼は二代目として頑張っていた。一般客を対象に主にベッド類を販売し、年商は1億5,000万円内外。家具業界不況の昨今、利益も300万円~500万円を維持しているからマァマァの経営状態である。

某日、大坪社長が不動産登記の相談事で佐賀司法書士事務所にやってきた。相談内容は所有している不動産の売買で、この件は何の問題も無かったのだが、日頃は陽気な大坪社長にしてはどことなく沈んでいた。

佐賀司法書士 ―「社長、何かあったんですか?心配事でも?」

大坪 ―「あー、ヤッパ、分かりますか・・・。」

大坪社長は、左右に首を振りながら困り果てている表情をしている。佐賀司法書士がコーヒーを差し出し、「私で役に立てるかどうかは分かりませんけど、お話して下さいな。」と言う。

大坪 ―「有り難う御座います。いや、もう、ホント、実に個人的な事なんでお恥ずかしいのですが・・・」

少し薄くなった頭頂部をかきながら、大坪社長は話し出した。

彼の自宅は会社とは別の所の住宅地にあった。二十五年前、30歳になった時に新築したのだが、全体的に老朽化が進み、去年、外壁の壁塗工事をしていた。そして、今度は下水管の取替工事を早急にしなければならなくなっていた。下水の水が逆流して彼の家の台所の床に溢れ出すことが頻発していたのだ。

元々、大坪社長の家の下水は東隣の神野さん方の床下を通って公共下水道へ流していた。だから、大坪社長が下水管の取替工事をするには、神野さん宅のブロック塀をいったん取り除かなければならないのだ。

ここで、大きな問題があった。

神野さんの御主人とは、以前、大坪社長が飼っている秋田犬のムダ吠えで言い合いになるほどの衝突があり、それ以来、隣近所としての付き合いは全く無かったのである。勿論、毎日、外で顔を合わすのだが、双方とも素知らぬ風で挨拶も交わさない。そんな間柄で、こちらの一方的なお願いをすることも出来ないし酌んで貰うことは無理だった。

専門業者に相談したら、神野さんに頼らず取替工事をする方法はあるとの事だったが、工事代金は300万円程度になるとの見積もりだった。つまり、大坪邸西側の公道の地下に排水管附設工事をすれば、表通りの公共下水道に流せるわけだ。

しかし、もし神野さんの協力が得られれば100万円以下で済むとも付け加えた。

大坪 ―「チョット、神野さんには今更お願いします、なんて言えませんし・・・」

佐賀司法書士 ―「分からないじゃないですか?ダメ元でお願いしてみたらどうですか?」

大坪 ―「いや、実は女房が頼んでるんですよ。」

佐賀司法書士 ―「それで?」

大坪 ―「先方の奥さんにお願いしたらしいんですが、翌日、キッパリと断られたんです。」

そう言って、大坪社長は肩を落とした。

「でも、社長、それはもっとお金をかけないで出来ますよ。」佐賀司法書士は断言した。

大坪 ―「え!先生、ホントですか!!」

佐賀司法書士 ―「勿論、本当です。民法二二一条です。」

ワンポイントアドバイス

堀内信大先生
※この事案については、東隣の神野さん方の配水管利用させて貰う方法が一番経済的な方法です。つまり、神野さん方の排水管に接続して大坪邸の排水管を付設すれば、工事代金は30万円から50万円程度しかかからないのです。勿論、神野さん方の配水管の設置・保存の費用を大坪坪社長も分担しなければいけませんが、それらを合計しても、西隣の公道地下に排水管附設工事をするよりはるかに低い金額で工事が出来るのです。
また、隣家の土地に排水管を付置することも出来ますし、自分の家の床下を通っている他人の排水管を使用することも法律では認められているのです。法文には「土地の所有者」と書いてありますが、借地人や借家人にもこの権利はあります。さらに、他人の土地に立ち入って排水管を修理することも出来ます。ただし、この案件にはご近所との今後のお付き合いとかのデリケートな問題も含んでいますので、何が何でも法律や裁判で片付けるのは避けたいものです。
先方と話し合いで問題解決した方がいいに決まってます。が、現実には、色々な状況が複雑に絡み合ってそう簡単に話し合いで和解とはいかないと思います。

佐賀司法書士事件簿は『株式会社日本データシステム』よりご協力を頂いています。企業調査はこちらをお勧めいたしております。
http://nds2700.server-shared.com/

関連記事

コメントは利用できません。

ページ上部へ戻る