【コラム】司法書士物語 第五話 「原野商法の詐欺話(1)」堀内信大

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司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマは、原野商法の詐欺話(1)について。

原野商法(1)話

㈱内藤建設は年商1億5,000万円の建設会社だ。代表の内藤賢司氏が、高校を卒業してから20年間の斯業経験を活かして、平成7年に創設した。その内藤社長が某日佐賀司法書士事務所に相談にやってきた。最近は、気軽に法律相談が出来るということで、彼のように日頃から何かと司法書士事務所を頼りにする顧客が増えている。その相談内容とは次のようなものだった。

10年程前、通っていたスポーツジムで崎田宏和というエネルギッシュな人物と懇意になった。彼は、『崎田開発㈱』という不動産会社を設立したばかりの社長で37歳の独身。内藤社長は、この自分より一回り下の若い経営者を気に入り、時々一緒に飲みに行ったり食事をしたりしていた。

ある日、内藤建設の事務所にやってきた崎田氏がいつになく神妙な面持ちでこう言った。
崎田 ―「社長、とてもイイ話があるんですが…」
内藤―「崎田さんのイイ話って、何だか怖いな。」
崎田 ―「怖いなんて…、社長、ホント、真面目な内緒のイイ話なんですから。」
内藤―「不動産業のアナタの内緒話ですか?ヤッパリ、怖いな。」
崎田 ―「冗談ばっかり!マァ、聞いて下さい。実は、北海道に必ず値上がりする土地があるんですよ。」
内藤―「なんだ、やっぱり怖い!原野商法なんじゃないの?今時、古いよ。」
崎田 ―「社長にそんなバカ話を持ち込みやしませんよ。私も信用第一の仕事なんですから。」
内藤―「そりゃそうだ。」
崎田 ―「阿寒湖の近くなんですが、ここに5年後、立派な道路と大きなトンネルが開通するんです。この情報は、私が緊密な交際をしている代議士秘書からの極秘情報なんですよ。当然、予定区画に入っている原野は今後相当な値上がりが期待できます。」
内藤―「ふーん。その代議士秘書は信用できる?」
崎田 ―「そりゃ、社長、こんな時のために日頃から代議士には献金してますし、その秘書には私の会社の社員という形をとって社会保険にも加入させてるんですよ。」
内藤―「マァ、代議士秘書といっても、公設秘書以外は個人事務所の使用人なんだから、賞与も退職金も無いし、社会保険は自分の力量でドッカの会社に潜り込むしかないからね。へー、でも君のとこはまだ新設会社なのに、代議士との関わりもチャント造ってるんだね。へー、さすがだなぁ。感心するよ。」
崎田 ―「へへへ、有り難う御座います。それで、その広大な原野をその秘書の尽力もあって弊社が所有致しました。」
「そいつは増々凄い!!」
崎田 ―「勿論、私は不動産業ですからこれを転売して利益を得るわけです。でも、この物件は、日頃からお世話になっている大事な人とか、親友、親戚、親兄弟だけに販売しようと思ってるんです。」
内藤―「分かった、俺をその中に選んでくれたんだ!」それでも内藤社長は内心で少し不安だった。
崎田 ―「この土地は必ず5倍以上に値上がりします。一度購入された後、社長が資金繰りでお金が必要になられた時は、その時その時の土地の価値でいつでも崎田開発が買い戻しますよ。税金もかからず本当に有利な利殖なんです。」

販売価格は500坪250万円。内藤社長は、いつでも買い戻してもらえる、という一言で購入を決意したのだった。その後、確かに道路と小さなトンネルは開通した。が、この地区の土地が飛躍的に値上がりすることはなかった。それどころか購入時の地価坪2千円は千五百円に落ちていた。内藤社長は何度か崎田氏に連絡して購入土地の買い戻しを交渉したのだが、いつもノラリクラリで逃げられ、挙げ句には「その時その時の土地の価格で買い戻すとの約束でしたから、今の地価千五百円の500坪分で75万円、これに手数料等を差し引いて30万円でなら買い戻します。」との回答だった。

崎田開発㈱は急伸展し、今では駅前にいくつものビジネスホテルを所有する優良会社に成長している。北海道の原野商法で莫大な利益をあげ、それが今日の基礎を築いているのは明かだったが、付き合っている取引先に怪しい人脈が多く購入者は全て泣き寝入りしていた。

そして、最近、内藤社長宅へ『東洋住宅㈱』という会社から電話がかかってきた。
「あなたの土地の周りを所有している人が売却を検討されています。それで当社としましては、この区画一帯をいっせいに販売することに致しました。あなたの土地も売却されたらどうだろうかとのお話ですが…」

この土地は必ず5倍以上に値上がりします。ということで、崎田氏から地価坪2千円の土地を購入価格坪2万円で購入させられたものだ。今、転売しても二束三文で、将来も値上がりする見込みは全くなさそうな無価値の土地である。この土地を販売してくれるという話なのだ。内藤社長は、(俺は250万円も出してんだ、せめて100万円でも戻ってくるんなら…)と思い、同社の担当者を呼ぶことにした。

**続く**

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