【コラム】司法書士物語 第七話 「中古車トラブル」堀内信大

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司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマは、中古車トラブルについて。

中古車トラブル

内装工事業「㈱斉藤建装(資本金1,000万円、年商8,000万円、従業員5名)」を運営する斉藤肇氏は、中古車自動車販売店「戸田自動車」から、憧れていた赤のBMW320iを購入した。新車なら諸費用込みで500万円は軽く超えるが、平成21年式の中古車だったから購入代金は車検2年付き総費用130万円。斉藤氏はそのBMWを展示場で見て、一発で気に入った。

そして、店員立会いのもとで自動車を確認。走行距離のメーターは「3万5千Km」と表示されていた。
「へー、走行距離は少ないだね。前のオーナーは年配者か女性なの?」
「車体の色からも、たぶん、女性だと思いますよ。随分、大切に乗っておられたようですね。」
「それにしても、ワンオーナーカーではないのに、7年目で3万Kmってホントなの?まさか、巻き戻しとかはないだろうね?」
「とんでもない!巻き戻しなどはありませんよ!!」

その店員は生真面目な表情で言ったから、斉藤氏はその言葉を信用した。しかし、購入後、一ヵ月もしないうちにそのBMWはエンジン部分の故障が頻発した。一度は、高速道路でエンジンが止まってしまい、JAFを呼んだりして大変な目にあった。斉藤氏は、もうすっかり嫌気がさし、残念だがこの憧れの車だったBMWを手放すことにした。

そして、自動車買取メーカーに査定を依頼したのである。ところが、数日後、査定をした買取メーカーから衝撃の連絡が封書で届いた。
“メーター巻き戻しがあるので買取には応じられません”との通知だったのだ。

斉藤氏は、あまりのショックに暫く茫然としたが、やがて、気を取り直し、こんな時の神頼みである「佐賀司法書士事務所」に向かった。
「先生、これはあんまりですよね!」

斉藤氏の担当は、補助者の佐々藤である。彼は、まだ資格を取っていないが、豊富な実務経験のある有能なスタッフである。
「それで、この戸田自動車には抗議されましたか?」
「いえ、それはしてません。感情にまかせて相手に直接文句言っても得策でないことは、いつも佐々藤先生からご指導頂いてますからね。そんなヘマはしませんよ。」
「それは、斉藤社長、さすがですね。」
「ハイ、まず真っ先に相談すべきだと思いましたので・・・」

確かに、感情的になってイキナリ海千山千の業者に抗議の電話をしても、身構えさせるだけで何の解決にもならない場合が多い。
佐々藤は、まず、当該車両の走行距離データベースの照合を取ることにした。それは「日本オートオークション協議会」が管理しており、早速、資料を取り寄せた。そして、驚愕の真実が発覚した。なんと、斉藤氏が購入する直前に、本件自動車は走行距離が「11万8千Km」の自動車として、オークションにかけられていた事が判明した。

さらに、陸運事務局にいき、本件自動車の登録事項等証明書を取得してみると、オークションにかけられてから数日後に、戸田自動車名義に書き換えされており、その後、斉藤氏に名義が書き換えられていることが確認できた。

すなわち、本件自動車の斉藤氏が購入する時点における実際の走行距離は「11万8千Km」であり、戸田自動車はその段階で、本件自動車を購入、その後、本件自動車はほどなくして、走行距離「3万5千Km」の自動車として、戸田自動車から斉藤氏に売却されたということになるのである。

登録事項証明書やオークションデータベースを見るかぎり、メーター巻き戻しは戸田自動車により行われている可能性が極めて高かった。また、戸田自動車が知ると知らないに関わらず、戸田自動車は本件契約時に本件自動車の走行距離を「3万5千Km」と、不実の事実を告知したことは明らかなのだ。

佐々藤は所長の佐賀司法書士に以上の内容を報告した。佐賀司法書士はすぐに決断した。
「フム・・・これは訴状を作成しよう。」

やがて、第1回目の口頭弁論が開かれた。本件は本人訴訟支援であるため、原告席には斉藤が立ち、佐賀司法書士は傍聴席に座った。戸田自動車からは戸田代表が来て「斉藤さんには、実際の走行距離は11万8千Kmだと口頭で説明していました。」と主張したが、裁判官は「書面上はそのような主張は認められ難い。」と早々に心証を開示。

その後、2回の和解期日を経て和解が成立した。
①本件自動車は現状有姿のまま、戸田自動車の負担により戸田自動車に返却する。
②戸田自動車は斉藤氏に100万円の車両代金と20万円の故障費用を支払う。

ワンポイントアドバイス

堀内信大先生
※本件が依頼主に有利な結果となったのは、直ぐさま司法書士事務所に駆け込んだからです。法律トラブルは、とにかく、真っ先に法務事務所に相談することが肝心です。

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