【コラム】司法書士物語 第九話 「私道の所有権移転 第②話」堀内信大

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司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマも、私道の所有権移転について。

私道の所有権移転 第②話

大北設計㈱(資本金1,000万円、社員5名、年商8,000万円)の代表・大北征男氏は、八王子の高台にある古い住宅地(8区画)の一戸の所有者から建て替えの依頼を受けた。大北氏は役場の建築指導課に事前打ち合わせに出向き、そこで、私道の所有権が他人名義になっているため、建築基準法上、自分の住宅であっても立て直しは、出来ないことが判明した。

私道は元売主・建設業「㈱山田工務店」の所有になっており、同社は私道を含めて分譲しその代金を受領していたので、単純な所有権移転登記洩れという事なのだが、現時点で同社は実質的に営業停止しており、同社代表共々所在不明だった。

困り果てた大北氏は、佐賀司法書士事務所に事態の収拾を依頼した。有資格者・高広は、「㈱山田工務店」代表・山田太郞氏を見つけ出し、『資格者代理人による本人確認情報』(本人と面談して事情を聴き各種書証の提示を受けてその本人性を確認し「この不動産はこの人の所有で間違いありません」という旨の書類を登記申請書に添付する方法)で、まずは登記済証紛失の件は解決したのだが―。

もう一つ大事な問題が残っていた。「根抵当権抹消」である。8区画の各住民になんら暇庇のない所有権を移転してやらねばならない。

佐賀司法書士の有資格者・高広は、この件の依頼主・大北氏と同道して整理回収機構と交渉した。私道については、「売買」ではなく、「真正な登記名義の回復 (無償)」を原因とする所有権移転登記を提案してきた。理由を訊くと、不良債権として整理回収機構に債権が譲渡されているから、「売買」であれば根抵当権を抹消するためには相当の弁済金がいる。「真正な登記名義の回復」ならば、事務経費程度の 整理回収機構との交渉で一件落着!

金額で抹消に応じられるとのこと。いずれにしろ抹消と移転がスムーズにいって、各住民が無事所有権を確保できたらメデタシなのだから、整理回収機構の提案通りでいこうということになった。

念のため山田太郎氏に連絡をとると、所有権はすでに当時の買主にあるのだから、「登記原因」が何であろうとかまわないとの返事ももらった。

いよいよ一切の手続きをとろうという日が来て、全員が顔をそろえることになった。

事業停止した「山田工務店」の清算人・山田太郎氏、8軒の所有者8名、整理回収機構の社員、一級建築士である大北設計㈱の代表・大北氏、佐賀司法書士事務所からは所長・佐賀司法書士と高広司法書士らの13名が集まった。

この場で依頼主の一軒を除いた残りの所有者7軒全員からも依頼を受け、司法書士等の資格者だけが出来得る方法である『資格者代理人による本人確認情報』で登記済証紛失を一気に解決し、さらに、その他の諸々の話し合いも円満に終了したのである。

数日後、無事登記は完了し私道は晴れて各住民八分の一ずつの共有となった。これで彼らは自分の意思と都合で自由に自分の家屋の建て直しが出来るようになったのだ。

一ヶ月後、満面の笑みを浮かべながら、大北氏が佐賀司法書士事務所にやってきた。
「いやぁ、今回はホント助かりました。やっぱり、法律は難しいですね。有り難う御座いました。」
「法律は市民の安寧な生活を守るために存在するのですが、逆に市民を苦しめたり悩ませたりし
ているのも現実なんです。要は、知ること、親しむことなんですけどね。」
「でも、それはナカナカ…」
「はい。その為に、私共、法務事務所があるんですから。」
「正に、市民のための“法律コンサルタント”といことですね!」

応対した佐賀司法書士と高広司法書士、それに補助者・佐々藤が、この仕事に大いなるやりがいを感じるひとときだった。

ワンポイントアドバイス

堀内信大先生
※本編で取り上げた宅地分譲の「私道」については、時々、問題が発生しています。悪徳業者は、建売分譲をする際に、道路だけを作為的に自分の名義に残したままにし、将来、買主が家を建て替えるときに、道路所有者から掘削同意書、埋設同意書の交付を求めざるをえないことを予測し、高額の承諾料を請求する魂胆なのです。これは、買主の無知につけこんだ、何とも悪どい手口です。司法書士は、買主と開発業者との間で、後日紛争が発生しないように、法律上の専門的なコンサルティングをしているのです。

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