【コラム】司法書士物語 第十一話 「こじれた債権」堀内信大

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司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマは、こじれた債権について。

こじれた債権

㈲井崎設備は、資本金300万円、平成10年3月創設した管工事会社である。代表は、井崎英明氏40歳、社員3名。10年前に独立し、地場大手ゼネコン・大手住宅メーカー・地区周辺の工務店筋を得意先に、平均年商4,000万円を計上していた。

最近は、相見積もりの競合物件や大手住宅メーカーの仕事が増えたため、売上げは好調なのだが利益が減少し、資金繰りはやや苦しい状況が続いていた。今月の管材屋の支払日までは後10日、3社合計で150万円が必要だった。

しかし、何社かの得意先を集金しても30万円足りない。

―あ~ぁ…。今月もオレは給与ナシで、貯金から貸付金が出ていくのか…。事務所で売掛金の帳簿を見ながら、井崎社長は深い溜息をついた。その時、事務所の電話に着信が入った。どうせ、仕入先の催促だろうと重い気持ちで電話に出る。
「はい、井崎設備です。」
―あー、もしもし、社長ですか?
「はい、井崎です。」
―チョットご無沙汰してます!内田工務店の内田です!

内田工務店は、大工2名の零細建築工事業者で、半年前、管工事組合の仲間から紹介されて50万円の住宅設備工事を請けた。支払いはキッチリ現金で貰っていたから印象は悪くなかった。
「あー、こちらこそご無沙汰しています!」
―社長、急ぎの仕事なんですよ―日帰り温泉施設の水道給排水工事で、先方はとにかく早く営業再開したいので徹夜の突貫工事をお願いしたい、との事。

工期は3日間、30万円、工事終了後の翌日に支払う、という好条件だった。井崎社長にとっては内心大歓迎の仕事だ。

「分りました!内田社長には半年前にお世話になっていますので、何とかヤリクリしましょう!」

井崎社長自ら先頭に立って工期厳守で仕上げた。翌日、満面笑みの内田社長から約束通り30万円を領収する。
「井崎社長、今回は助かりました。」
「いやぁ、こちらこそ有り難うございました。また、何か仕事が有りましたら是非とも弊社にお声をおかけ下さい。」

1週間後、内田工務店から今度は80万円の仕事が入った。支払日は末締めの翌月20日。今度も工期通り仕事を完了し、翌月の20日、井崎社長は集金に出向いた。集金に行くと、30万円だけ現金で後はチョット待ってくれと言う。
「そのかわり、100万円の仕事をお願いしますから。」

この仕事を受けたら、資金繰りも助かる。この所、50日のオール手形である大手建設会社の比重が増えていたので井崎設備もチョット資金繰りが厳しかった。のどから手が出るような仕事。

―まぁ、いいや。コッチも助かるし…

その仕事も終わり、100万円と前回の50万円の集金に行くと、「申し訳ない。今回は80万円だけ。」
そのかわりさらに、70万円の仕事をくれた。

つまり、この時点で内田工務店からこれまで330万円の仕事を請負い、190万円を回収していたことになる。少々支払いが悪いが、井崎設備にとっては大きい。

ところが、この残金140万円を中々支払ってくれなくなったのである。しかも内田工務店も仕事が減っているようで、その後の発注もない。2ヶ月ほど待った。その間、井崎設備は大手住宅会社の仕事をやっていたが、オール手形のため資金繰りが段々苦しくなっていった。

ここにきて、内田工務店からの未回収140万円が暢気に待っていられない状況になってきた。本当にこのままじゃ黒字倒産だ。元々月商300万円程度の井崎設備なのである。140万円はデカ過ぎる。今後の受注の見込みも薄い事から強く催促をしたが、電話では全然ラチがあかない。

井崎社長は、悩みに悩んで、佐賀司法書士事務所に駆け込んだのである。

この一件は、ベテラン補助者・佐々藤が担当した。まず、内田工務店に司法書士からの催促状を法律上の遅延損害金も含めて出した。これに対する内田氏の反応は早かった。

自分の方から井崎設備に電話をかけてきた。結局、
「アンタ、法律事務所を使うなんて非道いじゃないか」
「非道いのはお宅でしょう!一度や二度じゃなく約束を破ってるんだから。」
「裁判までやるんか?」
「法務事務所に依頼してるんですからお宅の対応次第ではそうなりますよ」
「やれるものならやって見ろ!」

と喧嘩別れ。

井崎社長はこの電話の内容も佐賀司法書士事務所に報告した。翌日、今度は佐賀所長が司法書士の身分証明書と請求書を持って内田工務店に出向いた。最初、内田氏は相当に憤慨していたが、佐賀司法書士にとってはいつもの事である。冷静に穏やかに事情を説明した。

「じゃあ、お宅の顔を立てて、今日20万円支払い、残りを30万円の4回払いでどうかね。」

一件落着である。

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