【コラム】司法書士物語 第十三話 「社員の使い込み」堀内信大

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司法書士 堀内信大

司法書士 堀内信大

認定司法書士。港北司法書士事務所の事業者。認定番号 第943031号。債務整理、債権回収、不動産登記及び商業登記など幅広い分野に精通する。近年は高齢者による後見、相続、遺言に関する相談が急増しており、日々の大半を遺産分割協議など遺産相続に関する対応に注力している。 ホームページ: http://horiuchi-js-office.com

認定司法書士の堀内信大です。日々の生活や会社経営にかかわる様々な出来事に関わる司法書士の仕事を、コラムというかたちを通じてお伝えしていこうと思います。今回のテーマは、社員の使い込みについて。

社員の使い込み

太陽光発電システム販売会社「㈲リベルテ(資本金300万円、平成10年設立、社員11名、年商1億円)」は、今年50歳の代表・藤田博喜氏が10年前に設立したもの。法人開拓班と一般開拓班の2チームを営業社員4名ずつで構成し、それぞれの班のリーダーとしてベテランの主任を配置し、一応の業績を維持してきた。

法人開拓班主任は河沼一郎、45歳。入社5年目のバリバリの営業マンで、個人成績は常にトップか2位で2年前主任として班リーダーに抜擢された。既婚者。子供は中学3年の娘と高校2年の息子がおり、子煩悩なマイホームパパだった。

3月某日午前11時頃、㈲リベルテに電話が入った。既に、全営業マンは外出しており、事務員の吉田充子が受話器を取った。

「はい、リベルテです!」
―あー、大曲建設の大曲だけど・・・
「はい!いつもお世話になります!」
―今日お宅から届いた請求書なんだけどね・・・

どうやら請求書送付についてのクレームのようだ。確かに、同社には一昨日請求書を送付していた。一ヶ月分の入金遅れがあり再請求だった。

「あのー、請求額が間違ってましたか?」
―違うよ。請求額のマチガイじゃなく、請求そのものが間違いなの!この分は、先月、お宅の主任さんが集金にきたから現金で支払ってるんだよ。

驚いたが、取り敢えず再請求書送付の件を謝罪した。受話器を置き、領収書の控えや出入金の帳簿類を確認した。が、何回見ても、「㈱大曲建設」からの入金記録は先々月までしかないのである。

嫌な予感がした。すぐ、藤田社長に連絡した。

電話の15分後、藤田社長は帰社し事態の報告を受けた。とにかく、担当は河沼だ。携帯にかけると溌剌とした柿沼の声が響いた。

―はい!お疲れ様です!!
何の屈託も無い元気溢れる声に、藤田社長が安心して集金の件を訊ねると、突然、沈黙した。
「もしもし?」
―はい、すいません・・・
「ん?すいません?どういうこと?」
―ちょっと生活費とかで・・・すいません、お借りしていました・・・

電話ではラチがあかないから直ぐ戻ってこい、となったが、結局、そのまま河沼は、戻ってこなかったのである。

その後の精査の結果、河沼担当の未収金が全部で500万円、その内、300万円が既に支払われていた事が発覚した。さらに、この男の化けの皮がはがれる!河沼には愛人がいた!彼は3年前くらいから自宅には帰らず、愛人との生活を続けていた。藤田社長は、河沼に大いなる期待をしていたから、毎年のクリスマスには子供達にあげてとケーキをプレゼントしていたが、これも実は愛人と2人で食べていたということになる。そして、二重生活でお金が続かず、サラ金に借りまくり、遂には、会社の集金に手を付けたのである。

その後も河沼は出社しない。電話には出るが、返済もノラリクラリと開き直ったような態度。しかも、会社所有の携帯電話と車を返さない。

藤田社長は、困窮して警察へ相談に出向いた。

だが、警察の応対は素っ気なかった。要は、得意先まで巻き込んでの大騒動を覚悟して事件化しなければ警察は動けない、という事だった。

「では、せめて携帯と社有車だけでも返すように警察から警告はしてもらえませんか?」
「警察は貸し借りに関しては民事不介入、窃盗でもなければ、社用車を借りパクする為に働きたいと言ってきた訳ではないので横領にもならない。」

この警察の対応振りも至極当然なのだ。

実は、河沼は現時点でも社員のままなのである。それは、得意先からの信用が篤いので、暫くは病気療養のたため休職中としていたのだ。河沼の携帯電話には顧客から頻繁に連絡が入るから契約を解除するわけにもいかず、また、現在の所在地が全く分らないので、車を取り上げることが出来ない。

正に八方塞がり状態の藤田社長は、最後の頼みの綱、佐賀司法書士事務所に駆け込んだのである。

これは、純粋な法律相談ではないのだが、困った顧問先からの依頼である。直ちに、佐賀所長は動いた。藤田社長が相談に行った警察署に電話し、まず、司法書士であるという身分を告げた。
「事件として取り上げるだけが警察の職務ではないのだから、善良な市民の困事に少し協力してもらえませんか?」とお願いのような要望をした。

担当警察官は藤田社長の時とはうってかわって協力的だった。河沼の携帯に警察官として警告の電話をしてくれたのである。

「君の行為は窃盗或いは横領になるぞ!スグサマ、社有車と携帯電話を会社に返しなさい!」

警察官の警告は効果絶大だった。翌日朝。会社敷地に社有車が返され、運転席には携帯電話と退職届、それに300万円の借用証が置かれていた。

ワンポイントアドバイス

堀内信大先生
※弁護士を顧問にするのは何だか大袈裟すぎる、と思っておられる中小零細企業。でも、企業として活動するためには法律の専門家が必ず必要です。司法書士も、街の法律家として、企業の色々な困り事に柔軟に対応出来るのです。

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