

鶴間 正二郎

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こんにちは、宅地建物取引士かつライターの鶴間正二郎です。不動産業界で19年間務めていたこともあり、裏も表も知り尽くしています。コラムでは、経験者だからわかる不動産の深い話をテーマとした記事を書いていきます。今回のテーマは、賃貸の条件について。
■早期の客付けには条件設定が大切、そこで飛び交う業界用語とは?
投資用物件を購入した場合、収益をあげるためにはなるべく早めに物件化して賃貸市場に出さなければなりません。その際には不動産会社とやり取りして賃貸条件を設定しますが、そこでは様々な業界用語が飛び交うことになります。なじみの深いものもあれば「?」と思ってしまうものもありますが、今回はオーナー側が知っておかなければならない最低限の用語についてご説明します。
◎敷金
敷金とは入居前にあらかじめ払っておく「保証金」のようなお金です。退去時における原状回復の際に入居者負担分と認定されたお金はこちらから差し引かれますし、万一家賃の滞納があった場合もまず敷金から補填されます。
現在では1か月というのが相場です。
別の機会に触れますが、最近では原状回復費用を入居者からほとんど取れなくなってきており、退去時にはほぼ返さなければならないと考えておいた方がいいと思います。
◎敷引き
敷金は退去時の清算が済めば残りの全額を返還しなければなりませんが、敷金の一部を返還しないとあらかじめ契約時に定めておくのが敷引きです。関西や九州など西日本の一部では「敷金4か月、敷引き2か月」などという事例が今でもあるようです。
関東ではペット可物件で見ることができます。室内でペットを飼育する際は床やクロスが傷みやすく原状回復に費用がかかるためペット希望者に関しては敷金を1か月分上乗せし、その分は敷引きとすることが広く行われています。
◎礼金
契約時に貸主に払う1回限りのお金で、退去時にも返還されることはありません。部屋を貸してくれる大家に対して面倒を見てもらうことに対するお礼といった意味合いがあったようですが、現在も慣習として残されています。通常は管理会社と折半しますが、「AD」の原資とする場合もあります。
しかし最近は礼金を取らない事例が一般的です。
◎AD(エーディー)
客付けしてくれた仲介会社に対して支払うバックマージンで、「広告料」と呼ばれる場合もあります。
客から仲介手数料しか貰うことができない仲介会社にとってAD付き物件は売上アップのため有難く、他物件より熱心に顧客に勧めてくれます。業者向けサイトに「敷金〇か月、礼金〇か月、AD〇か月」というように掲載されますが、この部分は絶対に客に見せません。
礼金を充当する以外はオーナーの負担となります。
◎更新料
契約更新時に借主が負担するお金で、その妥当性が裁判沙汰になりましたが、最高裁において適法と認められて判例が確定しました。
2年ごとに1か月分というのが普通で、通常は管理会社と折半します。
◎フリーレント
「フリーレント〇か月」というように表示されますが、この期間は家賃が発生しないというものです。借主にとって魅力的条件で部屋が決まりやすくなりますが、その期間は家賃収入がありません。
いかがでしょうか。空き部屋を早期に埋めるためには仲介会社や客の前にニンジンをぶら下げるのが最も効果的ですが、その分だけオーナーの負担が増えることになり、匙加減が難しいのです。